白金族金属の高効率回収に向けた新規イオン液体系抽出-電解技術の開発

溶媒抽出法は水相と有機相間での分配平衡を利用した金属イオンの分離手法です。本研究室では溶媒抽出法にイオン液体を活用することで、 荷電錯体が抽出されることを特徴とするイオン液体系抽出により、金属イオンの効率的な分離手法の開発を目指しています。 また、特に白金族金属を対象として、抽出分離後のイオン液体を直接、電析媒体として利用する抽出-電解プロセスを開発しています。 この抽出-電解プロセスは二次廃棄物減容化の観点から有効です。本研究は令和5年度科学研究費補助金基盤研究(B)の一環として取り組んでいます。 ここで、金属抽出錯体の還元・電析挙動の解析は重要となります。 そのため、本研究室では水晶振動子マイクロバランス法(EQCM)、微小電極測定法、走査型電気化学顕微鏡(SECM)、光電気化学測定法等の 高精度な複合電気化学測定法により多角的かつ詳細な解析を進めています。

※主な研究成果
・M. Matsumiya, R. Kinoshita, Y. Sasaki, J. Electrochem. Soc., 169 (2022) 082513.
・R. Kinoshita, M. Matsumiya, Y. Sasaki, Solvent Extr. Ion Exch.,40(6) (2022) 606-619.
・M. Matsumiya, Y. Tsuchida, R. Kinoshita, Y. Sasaki, J. Electrochem. Soc., 168(7) (2022) 076508.
・M. Matsumiya, R. Kinoshita, Y. Tsuchida, Y. Sasaki, J. Electrochem. Soc., 168(5) (2022) 056501.
・M. Matsumiya, Y. Song, Y. Tsuchida, Y. Sasaki, Sep. Purif. Technol., 234 (2020) 115841.
・M. Matsumiya, Y. Song, Y. Tsuchida, H. Ota, K. Tsunashima, Sep. Purif. Technol., 214 (2019) 162-167.
・松宮正彦「溶媒抽出法と電解析出法の連携による有用元素の回収」, 溶融塩および高温化学, 61(3) (2018) 86-93.
・Y. Song, Y. Tsuchida, M. Matsumiya, K. Tsunashima, Hydrometallurgy, 181 (2018) 164-168.       
・M. Matsumiya, M. Sumi, Y. Uchino, I. Yanagi, Sep. Purif. Technol., 201 (2018) 25-29.
・M. Matsumiya, T. Yamada, Y. Kikuchi, S. Kawakami, Solvent Extr. Ion Exch., 34(6) (2016) 522-534.
・M. Matsumiya, T. Yamada, S. Murakami, Y. Kohno, K. Tsunashima, Solvent Extr. Ion Exch., 34(5) (2016) 454-468.
・M. Matsumiya, Y. Kikuchi, T. Yamada, S. Kawakami, Sep. Purif. Technol., 130 (2014) 91-101.       

※研究助成       
・令和5年度文部科学省科学研究費補助金「基盤研究(B)」(23H02002)       
・平成29年度JOGMEC研究助成「金属資源の生産技術に関する基礎研究」
・平成27年度JST研究成果展開事業 A-STEP機能検証フェーズ (MP27115663745)
・平成26年度文部科学省科学研究費補助金「挑戦的萌芽研究」(15K14193)
・平成25年度笹川科学研究助成学術研究部門<化学系> 津田 七瑛 (25-313)
・平成24年度JST研究成果展開事業 FSステージ「探索タイプ」(AS242Z02857M)
・平成23年度JST研究成果展開事業 FSステージ「探索タイプ」(AS232Z01827C)

湿式精錬と低温溶融塩電析を基軸とする希土類回収技術の開発

近年、希土類資源の安定供給策は国家規模で重要視されており、諸外国依存脱却に向けた我が国独自の希土類回収技術の開発が求められています。 本研究室ではイオン液体系における電解析出法の研究蓄積に基づき、イオン液体のアニオン成分から構成される低温溶融塩(Low Temperature Molten Salt ;LTMS)を活用して、実廃棄物:Nd-Fe-B磁石から希土類種を効率回収するプロセスを実証してきました。 特にジスプロシウム(Dy)は資源的価値が高く、選択的に分離することが重要となります。低温溶融塩を利用した電解プロセスはDy金属を効率回収する省エネルギー指向の低温電解技術です。 また、原子力機構との共同研究により、希土類分離性能の高いジグリコールアミド(DGA)型抽出剤を利用したバッチ式多段抽出法を「湿式精錬技術」の中に新たに導入することにより、 Nd, Dyの相互分離を行うプロセスを開発しています。

※主な研究成果
・D. Nomizu, Y. Sasaki, M. Kaneko, M. Matsumiya, S. Katsuta, J. Radioanal. Nucl. Chem., 331 (2022) 1483-1493.
・M. Matsumiya, D. Nomizu, Y. Tsuchida, Y. Sasaki, J. Electrochem. Soc., 168(5) (2022) 056502.
・Y. Sasaki, M. Matsumiya, Y. Tsuchida, Anal. Sci., 36(11) (2020) 1303-1309.
・Y. Sasaki, Y. Ban, K. Morita, M. Matsumiya, R. Ono, H. Shiroishi, SERDJ, 27(1) (2020) 63-67.
・S. Murakami, M. Matsumiya, Y. Sasaki, S. Suzuki, S. Hisamatsu, K. Takao, Solvent Extr. Ion Exch., 35(4) (2017) 233-250.
・M. Matsumiya, H. Ota, K. Kuribara, K. Tsunashima, J. Electrochem. Soc., 164(8) (2017) H5230-H5235.
・H. Ota, M. Matsumiya, T. Yamada, T. Fujita, S. Kawakami, Sep. Purif. Technol., 170 (2016) 417-426.
・S. Murakami, M. Matsumiya, T. Yamada, K. Tsunashima, Solvent Extr. Ion Exch., 34(2) (2016) 172-187.
・M. Matsumiya, M. Ishii, R. Kazama, S. Kawakami, Electrochim. Acta, 146 (2014) 371-377.
・K. Ishioka, M. Matsumiya, M. Ishii, S. Kawakami, Hydrometallurgy, 144-145 (2014) 186-194.
・R. Kazama, M. Matsumiya, N. Tsuda, K. Tsunashima, Electrochim. Acta, 113 (2013) 269-279.
・A. Kurachi, M. Matsumiya, K. Tsunashima, S. Kodama, J. App. Electrochem., 42(11) (2012) 961-968.
・H. Kondo, M. Matsumiya, K. Tsunashima, S. Kodama, Electrochim. Acta., 66(1) (2012) 313-319.       

※研究助成
・令和4年度JST研究成果展開事業 A-STEPトライアウト (JPMJTM22C1)
・令和2年度JST研究成果展開事業 A-STEPトライアウト (JPMJTM20D6)       
・2021年度笹川科学研究助成学術研究部門<化学系> 野水 大輝 (2021-3040)       
・平成30年度文部科学省科学研究費補助金「基盤研究(B)」(18H03404)
・平成29年度JST研究成果展開事業 A-STEP機能検証フェーズ (VP29117940881)
・平成27年度文部科学省科学研究費補助金「基盤研究(B)」(15H02848)
・平成27年度笹川科学研究助成学術研究部門<化学系> 笹屋 なお子 (27-334)       
・平成26年度JST研究成果展開事業 FSステージ「シーズ顕在化」(AS2621394M)
・平成24年度文部科学省科学研究費補助金「若手研究(A)」(24686101)
・平成24年度環境省環境研究総合推進費補助金 (3K123018)       
・平成22年度環境省循環型社会形成推進費補助金(レアメタル特別枠) (K22025,K2301)

ラマン分光法と密度汎関数計算の複合解析による金属錯体の構造解析

イオン液体は低蒸気圧、低環境拡散性、難燃性などの特徴から、化学反応媒体や電気化学デバイスへの応用が期待されています。このイオン液体のバルク特性を決めているのは液体中のイオンの運動です。そして、イオンの運動はイオン間相互作用によって支配されています。したがって、イオン液体のミクロな構造とマクロな物性値の相関関係を明らかにするには、イオン間相互作用やイオンの運動に関する情報が必要になります。
特に希少金属の電解析出過程では、金属イオンの溶媒和構造などの静的構造及び拡散係数等の動的挙動が重要な因子となります。そこで、本研究室ではラマン分光法等の分光学的手法と密度汎関数計算の複合解析により、金属錯体の溶媒和構造を評価しています。

※主な研究成果
・D. Nomizu, Y. Tsuchida, M. Matsumiya, K. Tsunashima, J. Mol. Liq., 318 (2020) 114008.       
・Y. Tsuchida, M. Matsumiya, K. Tsunashima, J. Mol. Liq., 269 (2018) 8-13.       
・M. Matsumiya, R. Kazama, K. Tsunashima, J. Appl. Sol. Chem. Model., 5(4) (2016) 157-167.       
・M. Matsumiya, R. Kazama, K. Tsunashima, J. Mol. Liq., 215 (2015) 308-315.
・M. Matsumiya, K. Hata, K. Tsunashima, J. Mol. Liq., 203 (2015) 125-130.
・M. Matsumiya, Y. Kamo, K. Hata, K. Tsunashima, J. Mol. Struct., 1048 (2013) 59-63.       

※研究助成       
・2022年度笹川科学研究助成学術研究部門<数物・工学系> 木下 了磨 (2022-2027)       
・平成26年度笹川科学研究助成学術研究部門<数物・工学系> 風間 諒 (26-216)

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